<大きな実をつける樹木>
                                                                    011220追加
とある島の会員向け季刊誌に、投稿した文章です。
一般の方向けに、気楽に読める内容のものです。
投稿文とは一部文章を変更しています。


 内地では秋になると、紅葉が始まり、あちこちの森林や公園でドングリが落ちています。
小笠原は島が出来て以来の絶海の孤島(海洋島)なため、海が障害となり、
ドングリがなるようなブナ科の樹木は残念ながら、ありません。
ドングリは海を渡って来れないのです。

 でも、いくつかの樹木の果実はドングリよりも大きいのに、この島で自生しているものがあります。
こういう果実はきっと、ほとんどが海流散布という長い長い漂流の末にたどりついた果実の子孫なのです。
人間よりもはるか昔の漂流の本家あるいは元祖といえるでしょう。
こうやって、たどり着いた果実はきっと、水に浮いたり、塩分に強い構造をしていたりという性質があるから
島にたどり着けたのでしょう。
ただ、こういう形で小笠原にたどり着いた果実は全体の16%弱で、あまり多くはありません。
大部分は鳥や風を利用して空を超えてやってきています。いかに海を越えるのが大変なのか分かりますね。
 
 そこで、小笠原で一般的に見られる、大きな果実を紹介したいと思います。

 海を越えてやってきた果実は、まず海岸にたどり着きますので、海岸に自生しやすいはずです。
たとえば、モモタマナ・テリハボク(タマナ)・ハスノハギリ(ハマギリ)などがそうです。
でも山にもいくつか大きな果実をつけるものもあります。
たとえば、タコノキ・オガサワラビロウ・ヤロードなどがそうです。

 こういうものは、必ずしも海流散布ではないのもあるのでしょう。
また、海から渡ってきたにしても、浜辺から山に上がっていくには、
自然の力(台風などの影響)や生物の力があって、はじめて山の上に上がれたはずです。
きっと長い長い旅路の末にたどり着いた地だったのでしょう。

 これらのものは、海のものも、山のものも、小笠原でも秋に果実を落しますので、
その時期にはあちこちで目にすることでしょう。
秋・冬は山歩きや海岸散歩など、陸地の自然を楽しむのにいい季節です。ぜひ、探してみてください。

モモタマナ:
海岸に自生。広域分布。
桃に似ている果実。中の部分は食用になる。


タマナ:
 海岸に自生。広域分布。
果実はゴルフボールよりやや小さ目の球状。食べられない。

ハマギリ:
 海岸に自生。広域分布。
果実は黄色っぽい肉質の袋(総包葉)に
 包まれている。
 

オガサワラビロウ:
山地に自生。固有種
ちょうど、ドングリぐらいの大きさで、
やや楕円状で、青紫の果実。


タコノキ:
 島じゅういたるところに自生。固有種。
 集合果はパイナップル状の大きさで、多数の核果にバラけて落ちる。
核果の深部の種は食用。


ヤロード:
山地に自生。固有種。
黄色のラグビーボール状の種子が2個並んでつく。落ちると、バラける。


参考資料:アボック社 小笠原植物図譜  
                                                         以上

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