<歳時記 〜2003年9月30日投稿〜>
                                                           040209追加
                                           マルベリー 吉井信秋

小笠原野生生物研究会のニュースレターに投稿した文章です。


 とうとう台風がやってきた。

 原稿を書いている、9月30日午前中は、台風16号が最接近している最中だ。
こんな時は野生動物はどうやって避難しているのか。
たとえば、オガサワラオオコウモリは、いつものとおり樹木にぶら下がって休んでいるのか、
それとも静かそうなところを陰になるような樹木を探して避難しているのだろうか。
たとえば、セミはどうしているのか。時々不思議に思う。
また、植物はひたすら風雨に耐えしのんでいるだけなのだろうか。
台風の後の、世代交代や更新のチャンスを待っているのもいるのだろう。


 この台風の接近より何日か前から雨が降っているので、山の中ではいろんなキノコが出ている。
ヤコウタケ(グリーンペペ)もこの夏はあまり出ていなかったが、最近は数が増えているし、
やや大型のオオノウタケやチチアワタケなどもよく見かけるようになった。
それ以外にも、ホウキタケの仲間やツチグリの仲間など見ているのだが、???ばっかりだ。
小笠原キノコ図鑑がほしい。


 父島では9月中旬から、オガサワラゼミが鳴きだしている。
樹木の下や低いところに、抜け殻があるのをよく見かける。
父島は低木林が多いので、低いところにとまってることが多い。
だからセミがいっせいに鳴き出すとかなりうるさい。
しかし近づくと、意外と鳴きやんで、飛んでいくことも多い。
時々、弱々しい変な鳴き方をしていることがある。
そんな時探してみると、グリーンアノールに食われている時がある。
セミもやはり多数、餌食になっているのだろう。


 夏はあまりアカガシラカラスバトの目撃例がないので、話題に上がらないが、
8月中旬に、とある父島の山中のガジュマル林で1羽を目撃。
ちょうどガジュマルの実が落ちている時期で、それを食べに来ていたのだろう。
見た感じはやや大きく、首が太くて、鳴き声も聞こえたのでオスだろう。
遠い場所なので、その後、再確認には行ってない。
人家付近にも大きなガジュマル林が何箇所かあり、実もつけているが、見かけたことはない。
例年10月以降から、父島の夜明道路沿いで目撃例が出てくる。


 アカガシラカラスバトもオガサワラオオコウモリも今では餌を外来植生に依存している部分もあるだろう。
外来種除去には、そんなことも考慮しなければいけないかもしれない。



                                                         以上