<′99バンドウイルカ・父島周辺調査結果>

991130
 MULBERRY  吉井信秋


本年も、1999年・5月から9月までの父島周辺海域でのドルフィンスイム及びウォッチングにおいて
観察された結果をまとめました。
例年どおり、研究者のように調査だけを目的とした観察ではないので、やや観察不足のところもありますが、
ある程度の傾向は出ており参考になるところもあると思います。
今年は仕事の都合により、やや調査期間が短くなったのが残念でした。
結果としては、昨年の結果を裏付けるようのものが多く出ており、
さらに、昨年よりも評価項目を増やして、いろんな面から評価をしてみました。
要約やまとめは載せませんので、各項目の考察をそれぞれご覧になってください。

調査日:    1999−5−1から1999−9−10まで

場所
      父島列島周辺海域

調査方法:  遊漁船およびプレジャーボートによる船上観察および水中での直接観察。

調査人:    吉井信秋(他者からの情報は一貫性がなくなる恐れがあり、データに含まず。)


   
1)発見回数:  全数53回   

              *発見した群れから離れるまで、あるいは完全に見失うまでを1回とする。
                5月:12回   6月:15回   7月:10   8月:15回     9月:1回

昨年のデータでは、5−9月で  年間の60/75=80%が見れているので、
 今年に関して、通年観察していたら、昨年同様70―80回程度と思われる。
  5月は23回  23/75=31%と約1/3となった。


2)個体数:   全数513頭   513頭/52回=平均9.9頭(2頭−30頭以上
       5月に群の数多い。    

         1−4頭    :13回     5−9頭  :15回  10−14頭:13回
       15−19頭:3回  20頭以上 :8回

  月別平均  5月 164/11=14.9頭 6月 140/15=9.3頭
        7月  86/10=8.6頭  8月 117/15=7.8頭  9月  6/1=6頭

ほぼ昨年・一昨年の結果と同様で今年も平均10頭ぐらいの群れという結果となった。
 2−9頭が28/52=54%と過半数を超え、2−6頭が23/52=44%となり、
 大きい群れが平均値を押し上げていて、実際にはこの平均値よりももう少し少ないのが実情と思われる。
 20頭以上の大きな群れを作るのは、8/52
­=15%であり、この結果からすると、
 基本的には、5−6頭ぐらいまでの群れで行動し、たまに集まって大きな群れとなると推定される。
 単独行動のイルカは今年もデータとして残らなかった。ほとんどいないと思われる。
 別で見ると、春に群が大きく徐々に小さくなる傾向にある。繁殖活動と関係があるのかも。


3)発見場所: 南島西側域(マンゾウ穴付近から北丸根付近まで)  25/53=47%       
                   二見湾付近(ぎへい岩付近から野羊山付近まで)    12/53=23

昨年同様、南島西側域(マンゾウ穴付近から北丸根付近まで)と
 二見湾付近(ぎへい岩付近から野羊山付近まで)との
2つのエリアが高発見率となっており、
 昨年の結果から、これはボートのこのエリアへの通過する頻度が影響し、
 つまり、南島西側域は重点的にイルカを探すエリアであることと、
 二見湾付近は、入出港で必ず通るエリアであることを理由としていたが、それを実証するような結果となった。

 もし、どこも平均して同じように通過しているとすれば、違う結果が出るかもしれないが、
 南
島西側域はイルカの休息エリアのため、同様に高い確率となることは間違いない。
 



4)発見時間:    午前中   28/53=53%   午 後 25/53=47%
         *調査時間は8:00−17:00の範囲

昨年と同様に、午前と午後で発見率に大きな差が出ていない。
 このことから、日中の間は、群れのいくつかが、島の沿岸よりに回遊していることが推定される。
 12:00はお昼休みにあたるので、発見回数がなかった。


5)潮汐と場所    南島西側域  上げ潮のときが多い。   11/25=44%
                      二見湾付近  下げ潮のときが多い。  6/12=50%

昨年と同様、南島西側域は明らかに上げ潮時間帯が多く発見されている。
 この場所が休息場所で、下げ潮より上げ潮の方が南島の影となって潮がかからないことが、
 休息に適している理由としている。したがって、潮止まりも含めると18/25=78%にもなる。

 ただ、観測条件としても、上げ潮のときの方が潮波が立たず探しやすいことから、
 上げ潮の時間帯を主に探していることもデータに影響している。

 二見湾付近については、昨年は、移動場所のためあまり潮汐は関係ないとする結果であったが、
 今年は、下げ潮のときに多くなっている。下げ潮に乗って、南島のほうへ向かって移動しているとも考えられる。
 もう少し調査を続ける必要がある。

     
6)   6つに分類し、各発見で、いくつか該当する場合もあったが、一番目立った行動を1つ当てはめた。

    @睡眠:                              19/52=37%
    Aゆっくりだがすぐ潜る・人は無視:     7/52=13%
    B移動・速い動き : 16/52=31%
    Cイルカ同士のからみ行動:              3/52=6%
    D人とよく遊ぶ:                        2/52=4%
    Eその他 :1)波乗り                   3/70=4% 
                     2)他の種と一緒(クジラなど)  4/52=8%
                   3)えさとり                  0/52=0%

上記の分類を更に代表的な4つの行動に分類し、睡眠・移動・索餌(えさとり)・社会的行動に分けた。
 @・Aが睡眠。(Aは分類にあいまいなところがありますが、個人的には睡眠と思われます。)Bが移動。
 E−3)がえさとり。C・D・E−1・E−2が社会的行動。
 
 そうすると、睡眠
  26/52=50%         移動  16/70=31%
                  索餌(えさとり)0%    社会的行動  10/52=19%
 となり、昨年とほぼ同様の結果となった。
 やはり日中の睡眠と思われる行動が半分を占め、えさとりが記録に現れておらず

 (魚をくわえているのはありましたが)日周行動として、夜間にえさとりをし、
 日中に睡眠をとっていることが推定される。


7)場所と行動:   南島西側域    休息エリア。    二見湾付近    社会的行動・移動。

南島西側域は、睡眠行動(@A)が63%で、明らかに休息エリアである。
 二見湾付近は、データ数がやや少ないが社会的行動(D・E−2)が33%と高くなっており、
 二見湾のやや水深のある大きな入り江という環境が、ここを通過するときに、
 たとえばはハシナガイルカと遭遇したりすることのように、社会的行動に適しているのかもしれない。



8行動別の時間・頭数・場所:
           睡眠 13:00―15:00ごろ。南島西側域多い。
                  移動 群れ小さく。 午前中。        社会的行動 群れやや大きく。二見湾付近多い。

  <睡眠> 
     13:00―15:00で13/26=50%となる
*睡眠は、日中の間、頭数はあまり変えずに割とまんべんなく見られ、そのうち午後1:00台にピークが見られた。
 このデータからも、南島西側が、休息エリアになっていることが言える。
 
<移動> 
     午前中が11/16=69%と高い。
     移動は、群を小さくして、島の周辺を回遊し、午前中に目立つ。
  この結果からすると、上記の睡眠は、午後に多いとも考えられる。

  <社会的行動> 
     まんべんなく見られる。
     社会的行動は、群の数を大きくし、日中の間時間にかかわらず行われているようで、
  二見湾周辺で平均より高い結果が出た。場所と行動の項でも述べたように、
  二見湾という環境が影響しているのではないだろうか。

 
行動別に分けて得られた結果をまとめて、平均的なイルカの日周行動にすると、
 午前中島の周辺に戻ってきて、群れを 小さくして移動する。
 時間にかかわらず、群れが何かのきっかけで二見湾のようなところに集まったところで、社会的行動をとる。
 午後の上げ潮のころになって、南島西側域まで移動し、そこで睡眠行動をとって休息する。
 そして、夕方以降にえさとりに沖合いに出て行く。というような形であらわせられるのではないだろうか。



9睡眠行動の時間・頭数:データが多く、休息エリアと考えられる南島西側域の全行動と睡眠行動とを比較した。


南島西側域の、睡眠行動と全行動を比較すると、
 睡眠行動は午後に目立って多く、頭数に関しては行動によってあまり変化がないが
 全体の平均から見ると、南島西側はやや多い結果となっている。
 また潮汐に関しては、下げ止まりから上げ潮に高くなっていた。
 この結果からすると、南島西側は、午後の、上げ潮のころに休息にやってくると
 考えることができるのではないだろうか。


10
二見湾付近の行動:
このエリアは移動・社会的行動の比率が高いが、データがあまり多くないので全体で評価した。


二見湾付近は、午前中に見つけられることが多く、この理由として、朝の出航時に必ず通過することと、
 午前中によくハシナガイルカがこの付近に休息にきていることが影響していると思われる。
 頭数は全体の平均より若干増えている程度である。
 南島西側域の休息と関連づけるとすると、朝に、移動や社会的行動のため、二見湾周辺に下げ潮のころやってきて、
 午後の上げ潮のころを狙って、休息に、南島西側域に移動するというふうになる。



11大きな群れの行動:データはやや少ないが、20頭以上の群れを評価してみた。

南島西側域5/8=63%とかなり高い。
*13:00―15:00 6/8=75%と午後に集中
 
20頭以上の大きな群れとなるのは、南島西側域で、午後に集中し、休息中は少ない。
 これに関しては、どういうときに大きな群れとなるのか、今後も検討の必要がある。現状はうまく分析できない。


データ収集は主にエスコートでの仕事中に行われ、エスコートに対して、感謝の意を表します。
また、船に乗せてくださったみなさんありがとうございました。
ご意見・批判等ありましたら、ぜひご一報ください。連絡は、
yoshii@d5.dion.ne.jp   まで。
                                                                      
                                                         以上
                                     

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